作品を1分だけ見る

解説を読む前に、次の3か所だけ見てみてください。答えを出す必要はありません。

  1. 1
    3つを別々のものとして見る

    椅子そのもの、写真、定義文を同じだと思わずに見分けます。

  2. 2
    どれがいちばん『本物』に見えるか考える

    自分が自然に本物だと思ったものを確認します。

  3. 3
    定義文を最後に読む

    言葉が、実物や写真をどれだけ固定しているかを見ます。

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実物、写真、定義文は、同じ椅子ではない

実物は座れる家具です。写真は、その場に置かれた椅子の姿を平面へ写します。辞書の文章は、個別の形を離れて『chair』という言葉の範囲を定めます。

三つは同じ対象を指しますが、働きは異なります。目で見ること、触れて使うこと、言葉で理解すること。そのずれを横一列で比べられるのが、この作品の核です。

作品の中心は、三つの関係にある

実物の椅子を本体、写真と文章を補足だと考えたくなります。しかし展示では三つが同じ高さで並び、どれか一つだけを中心と決められません。

コスースが扱うのは、椅子のデザインより『何かを理解するとはどういうことか』です。見る、使う、読むという三つの行為を分け、普段の理解が複数の方法に支えられていることを示します。

物は消えず、考えるための部品になる

コンセプチュアルアートは、物よりアイデアを重視すると説明されます。それでも《One and Three Chairs》には、実物の椅子が必要です。写真か定義文のどちらかが欠けても、三者の比較は成立しません。

コスースは物を捨てず、物、写真、言葉を同じ列へ置き直しました。椅子は眺めて終わる完成品から、像と言葉の関係を考えるための一要素へ変わります。

言葉だけの作品へ進む前の橋渡しになる

同時期の《Self-Described and Self-Defined》では、言葉が画面の前面へ出ます。物の姿を眺めるより、文章の構造を読む時間が長くなる作品です。

《One and Three Chairs》には、見慣れた家具が入口として残ります。実物から写真へ、写真から定義へ目を移すうち、像と言葉の問題へ自然に進めます。コンセプチュアルアートを初めて見る人にも入りやすい理由です。

三つの役割を、動詞で言い分ける

実物は『座る』、写真は『写す』、定義文は『規定する』。三つの役割を動詞で言い分けてみてください。正しい椅子を一つ選ぶ必要はありません。

次に、どれか一つを隠した場面を想像します。三つがそろったときに初めて、普段の理解が物、像、言葉に支えられていると実感できます。

作品で見る

ジョセフ・コスース《One and Three Chairs》
One and Three Chairs / ジョセフ・コスース1965年
物、像、言葉の三つを並べることで、作品の本体がどこにあるかを揺さぶるコスースの代表作
画像を拡大画像出典
ジョセフ・コスース《Self-Described and Self-Defined》
Self-Described and Self-Defined / ジョセフ・コスース1965年
言葉そのものが作品の前景へ出てくる初期コンセプチュアルアートの代表例。比較すると《One and Three Chairs》の入りやすさがわかる
画像を拡大画像出典
オン・カワラ《June 19, 1967》
June 19, 1967 / オン・カワラ1967年
概念中心の作品が、時間や反復の感覚へどう広がっていくかを考えるときの良い比較対象
画像を拡大画像出典

よくある質問

この作品は、どれが『本物の椅子』かを問う作品ですか?
それよりも、同じ対象を理解する方法が一つではないことを示す作品です。実物、写真、定義は、それぞれ違う仕方で『椅子』を成立させています。
説明を読まないと理解できませんか?
実物は座れる、写真は写す、定義文は言葉の範囲を決める。この三つの役割を分ければ、作品の中心がどこにあるのかを考え始められます。
なぜコンセプチュアルアートの代表作と言われるのですか?
見た目の完成度より、作品を成立させる考え方そのものを前に出したことがよく見えるからです。とてもシンプルに、その転換点を体感できます。

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解説なしで見る《One and Three Chairs》で言葉と物のずれを見る

この3つは同じ椅子を指しているのに、なぜまったく同じには見えないのでしょうか。

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