46図を、版下絵が描かれた順に見渡せた

2024年に井内コレクションから寄託された『冨嶽三十六景』が、この展覧会で初めて公開されました。そろったのは、題名の「三十六」を超える全46図です。

展示は版下絵が描かれた順序をたどる6グループに分かれていました。大波、橋、職人、舟、雪景色。そのつど富士の大きさと位置が変わります。《神奈川沖浪裏》一枚から入っても、シリーズを歩くうちに別の富士が残る構成でした。

大波は二枚、赤富士にも青い一枚があった

全46図に加わったのが、《神奈川沖浪裏》と《凱風快晴》の別摺です。大波には摺りと保存状態に優れた一枚、《凱風快晴》には藍を基調にした希少な「青富士」が並び、合計48点になりました。

版画は、同じ版木から摺っても同じ見え方にはなりません。二枚を並べると、輪郭の切れ、藍の濃さ、紙に残った明るさまで比べられます。赤富士と青富士では、山の形を変えずに朝の温度だけが入れ替わったようでした。

西洋美術の館で、北斎の切り取り方を見る

国立西洋美術館の公式解説は、北斎がモネやドガら西洋近代の画家を引きつけた歴史に触れています。同じ時期にはチュルリョーニス展も開かれ、日本の版画を西洋美術の展示室で見る組み合わせになりました。

北斎の影響を、漠然とした「ジャポニスム」で終わらせない見方もできます。画面の端で舟を切る、遠い富士を小さく残す、波の輪郭で空を囲む。構図の具体的な選択を見ると、後世の画家が何に驚いたのかを想像しやすくなります。

終了後に読み返すなら、大波と赤富士から

展覧会は終わりましたが、出品作の核はサイト内でたどれます。北斎入門でシリーズの成り立ちを押さえ、《神奈川沖浪裏》と《凱風快晴》を一枚ずつ読む。この3本で、富士の距離と色の違いを追えます。

さらにジャポニスムの記事を加えると、公式解説が示した西洋美術との関係へ進めます。展覧会名だけを記録するより、気になった一図を次の入口にした方が、終了後も内容が残ります。

富士が主役ではない一枚を覚えておく

『冨嶽三十六景』では、富士が画面いっぱいに立つこともあれば、橋や舟の向こうに小さく見えるだけのこともあります。同じ山なのに、天候や仕事、人の移動によって役割が変わります。

《神奈川沖浪裏》や《凱風快晴》に加えて、富士が脇役になった一枚を覚えておく。すると46図が、有名作を集めた一覧から、江戸の各地を歩くシリーズへ変わります。

展覧会を振り返る2枚

全46図の入口になる二枚です。波の奥に小さく置かれた富士と、画面いっぱいに立つ富士を比べられます。

葛飾北斎《神奈川沖浪裏》
Under the Wave off Kanagawa / 葛飾北斎1830-32年頃
展覧会では保存状態に優れた別摺も展示された。大波の奥に小さな富士が収まり、舟は波の斜面に沿って進む
詳しく読む画像を拡大画像出典
葛飾北斎《凱風快晴》
Fine Wind, Clear Morning / 葛飾北斎1830-33年頃
通称「赤富士」。展覧会では藍摺版の「青富士」も並び、同じ輪郭を色だけで比較できた
詳しく読む画像を拡大画像出典

よくある質問

いま開催中ですか?
いいえ。国立西洋美術館で2026年3月28日から6月14日まで開催され、現在は終了しています。
《神奈川沖浪裏》だけを見る展覧会ですか?
いいえ。『冨嶽三十六景』全46図に、《神奈川沖浪裏》と《凱風快晴》の別摺を一枚ずつ加えた全48点の展覧会でした。
終了後に作品をたどるなら、何から読むとよいですか?
北斎入門、《神奈川沖浪裏》、《凱風快晴》の順がおすすめです。さらにジャポニスムの記事を読むと、国立西洋美術館が示した西洋とのつながりまで追えます。

次の入口

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葛飾北斎《神奈川沖浪裏》

作品ガイド

《神奈川沖浪裏》を、波だけで終わらせない

読み方
かながわおきなみうら
作者
葛飾北斎

大波に目を奪われたら、その下の舟と、奥の小さな富士も探してみてください。《神奈川沖浪裏》は「かながわおきなみうら」と読み、1830〜1832年頃に刊行された北斎『冨嶽三十六景』の一図です。

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葛飾北斎《凱風快晴》

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波も人もいない。《凱風快晴》の赤富士

《神奈川沖浪裏》にあった波も舟も、ここにはありません。赤い富士が画面の大半を占め、山裾に木々、空には雲が細く残るだけです。それでも静まり返った絵には、押し返されるような強さがあります。

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