縦2.3メートル、横3メートル近い《都市》

フェルナン・レジェ(1881-1955)が1919年に描いた《都市》は、油彩の大画面です。フィラデルフィア美術館の作品情報では、縦231.1センチ、横298.4センチ。小さな図版で見ると幾何学模様に見えますが、実物は鑑賞者の視野を大きく覆います。

一つの広場を遠くから眺めた絵ではありません。建物らしい垂直線、階段、広告の文字、機械の部品に似た円筒、断片的な人物が、別々の角度から入り込んでいます。

文字、階段、円筒を一つずつ探す

入口にしやすいのは、絵の中の文字です。その周りにある階段状の線を追い、黒い輪郭で囲まれた赤や青の形へ移ります。人物は中央の主役として置かれず、建物や機械と同じ断片の一つに収まっています。

フィラデルフィア美術館の教材は、こうした形を照明、ショーウインドー、看板、建物に結びつけています。ただし、どれか一つを正解として当てる絵ではありません。街角で複数の表示が同時に目へ入る、その順序のなさが画面に残されています。

色も形も、画面の奥へ退かない

風景画では、手前のものを大きく、遠くのものを小さく描くことで奥行きを作るのが一般的です。《都市》では、その見通しがほとんど利きません。白、黒、赤、青、黄の面が、前後関係を譲らず手前へ出てきます。

だから視線は一点に落ち着かず、画面の端から端へ跳びます。レジェ自身も、近代の都市生活は以前より断片的で、速く動くものになったと捉えていました。絵の見づらさは、その速さを疑似体験させる仕掛けです。

絵画の外にあった広告や舞台も取り込んだ

《都市》には、キュビスムの分割された形と一緒に、街頭の文字や広告の強い色も入っています。フィラデルフィア美術館は、この作品をレジェが都市環境とマスメディアへ関心を広げた転機として位置づけています。

同館の展覧会は、《都市》を広告、舞台芸術、建築との関係から紹介しました。絵画が美術館の中で完結せず、街で目にするものと同じ場所へ出ていく。そう捉えると、ばらばらな形の出どころを探しやすくなります。

最初の一分は、三つだけ探す

初めは、文字、階段、人物を一つずつ探します。見つけた順番を覚えておき、今度は赤い面だけを目で結んでください。同じ絵でも、二周目には違う経路ができます。

最後に画面から少し離れます。形の意味が薄れ、色と黒い線のリズムが前へ出てきたら、《都市》の二つの顔――街の断片と抽象的な構成――を行き来できています。

作品で見る

フェルナン・レジェ《都市》
都市 / フェルナン・レジェ(1919年)
231.1×298.4センチの画面で、街の断片が同じ面に重なる
画像を拡大画像出典
フアン・グリス《ピカソの肖像》
ピカソの肖像 / フアン・グリス(1912年)
顔と上半身を複数の面に分ける、1912年のキュビスム
画像を拡大画像出典
ワシリー・カンディンスキー《コンポジション8》
コンポジション8 / ワシリー・カンディンスキー(1923年)
円や直線を使いながら、レジェとは異なる軽い奥行きを作る
画像を拡大画像出典

よくある質問

フェルナン・レジェとはどんな画家ですか?
キュビスムの造形を、機械、広告、建設、映画など近代都市の日常へ広げたフランスの画家です。太い輪郭、円筒形、鮮やかな色面が特徴です。
フェルナン・レジェの代表作は?
代表作の一つが1919年の《都市》です。文字、鉄骨、人物、信号のような形を密集させ、戦後パリの動的な都市環境を大画面に構成しています。
レジェはキュビスムの画家ですか?
キュビスムの影響を受けた重要作家ですが、それだけではありません。機械時代の都市感覚を取り込んだ独自の展開が特徴です。
《都市》は何を描いているか分かりにくいです
文字、階段、建物、人物など、街で目にする断片が描かれています。一つの景色に組み直すより、まず三つほど形を探し、視線がどこへ移るかを見る方が入りやすい作品です。
最初の1分はどこを見るとよい?
文字、階段、人物を順に探してください。次に赤い面だけを目で結ぶと、物の形と色の配置を別々に見られます。

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