まず、『荒い写真』の説明だけで終わらないことが大事です

アレ・ブレ・ボケは、文字どおりには『荒れた粒子』『ぶれ』『ぼけ』を指します。だから技法の話に見えてしまいやすい言葉です。けれど実際には、どう見えるか以上に、どう世界を受け止めていたかが重要です。

戦後日本写真の文脈では、整った視界や安定した説明が、そのまま現実から遠く感じられる場面がありました。そこで写真は、見やすさを少し手放すことで、逆に現実に近づこうとします。

見づらさは、混乱そのものを伝えるための方法でもありました

写真は本来、証拠や記録と結びつけて語られやすいメディアです。だからこそ、ぶれたりぼけたりした写真は『ちゃんと見せるつもりがない』ように感じられます。

でもその『ちゃんと見せない』ところに意味がありました。現実が一枚で整理できないなら、その不安定さごと像に残す。アレ・ブレ・ボケは、混乱を美化するのではなく、混乱を消さないための姿勢でもあります。

大事なのは、荒さそのものより『何を信じていないか』です

この言葉が有名になったあと、荒いモノクロ写真の見た目だけが流通してしまうこともありました。でも中平卓馬や森山大道の仕事を見ると、核心は表面効果だけではありません。

彼らが疑っていたのは、写真が世界を透明に伝えるという前提です。だから粒子や傾きは装飾ではなく、その疑いの痕跡です。そこが見えると、アレ・ブレ・ボケは一気に立体的な言葉になります。

ぼけた写真が、かえってこちらに迫ってくることがあります

不思議ですが、何もかも鮮明な写真より、少し崩れた写真の方が記憶に残ることがあります。情報が減るぶん、見る側が不足分を埋めようとして、写真との距離が近くなるからです。

戦後日本写真では、この『近づき方』がとても大事でした。写真は説明書ではなく、現実に触れたときのざらつきそのものになる。アレ・ブレ・ボケは、その感覚を引き受けた言葉です。

最初は、『上手かどうか』ではなく『何を削っているか』を見る

最初から思想の話を全部追う必要はありません。この写真が何をあえて見えにくくしているのかを見るだけでも足ります。人物の顔なのか、遠近感なのか、画面の手前と奥なのか。

そこから一歩進んで、『その削り方によって何が前に出たのか』を考えると、荒れた写真が読みやすくなります。気分、速度、街のざわめき、身体の近さ。そうしたものが見えてくると、アレ・ブレ・ボケは具体的な言葉になります。

関連資料でたどる

ここでは代表作そのものだけでなく、アレ・ブレ・ボケが後からどう読まれてきたかをつかめる関連資料も含めています。

LE BALでのProvoke展の展示風景
Vue de l'exposition "Provoke" au BAL / LE BAL Paris2016年
アレ・ブレ・ボケが、一つの見た目ではなく、展示でも再構成される歴史的な問題として読まれていることがわかる風景。
画像を拡大画像出典
テート・モダンでの森山大道とマーティン・パー
Daido Moriyama and Martin Parr / titus_alone2012年
荒れた写真が一時的な流行で終わらず、後年の写真史でも参照される視覚言語になったことを示す記録。
画像を拡大画像出典

よくある質問

アレ・ブレ・ボケは、ただの下手な写真ではないのですか?
下手さとは別です。見づらさを通して、安定した視界では捉えにくい現実を残そうとした選択として見るとわかりやすいです。
アレ・ブレ・ボケと『Provoke』は同じ意味ですか?
近いですが、完全に同じではありません。『Provoke』は雑誌とその周辺の運動で、アレ・ブレ・ボケはそこで象徴的に現れた視覚言語だと考えると整理しやすいです。
最初の見方として何を意識すればいいですか?
何が見えにくいかだけでなく、その見えにくさによって何が前に出てきたかを追うと見やすいです。気分や速度が立ち上がってくると、読み方も変わってきます。

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次にできること

次に1本読む『Provoke』入門:写真をわざと見えにくくしたのは、何を疑っていたから?

写真雑誌『Provoke』を、1968〜69年の短い活動がなぜ戦後日本写真の象徴になったのかという観点から見ていく記事です。時代背景と写真の見え方をたどります。

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