映画との違いは、映像より見せ方にある

映画とビデオアートは、使う映像だけでは分けられません。一画面を最初から最後まで見る作品もあれば、複数のモニターの間を歩く作品もあります。映画館で上映されるか、展示室に置かれるかだけで決まるわけでもありません。

確かめたいのは、始まりから見る必要があるか、途中で出入りできるか、画面が何台あるか、観客がどこに立つかです。映像の内容と、その見せ方を一緒に設計した作品がビデオアートです。

撮った映像を、その場で返せるようになった

1960年代、持ち運べるビデオ機器が作家の手に届き始めます。フィルムの現像を待たず、撮った像をすぐモニターへ出せる。放送局から届く番組を見るためのテレビを、撮影と再生の道具として使えるようになりました。

録画を繰り返す、同じ映像を複数の画面へ流す、会場にいる人をその場で映す。こうした操作は、絵画の代わりに動画を置く発想を越えています。テレビとカメラそのものが材料になりました。

仏像の正面には、いま撮っている映像がある

《TV Buddha》は1974年の作品です。仏像にカメラを向け、その像を閉回路でテレビへ送ります。仏像は少し前の録画を見ているのではありません。カメラの前に座る現在の姿が、そのまま正面へ返ってきます。

横から見る観客には、仏像、カメラ、画面の三点が見えます。仏像は画面を見ているようで、実際には動きません。その輪を眺め続けるのは観客です。作品に入ったら、カメラの位置まで歩いて確かめてください。

《Vertical Roll》は、テレビの故障をリズムにした

ジョーン・ジョナス《Vertical Roll》は、白黒・音声付きで19分38秒あります。テレビの同期がずれたときに走る黒い帯を消さず、その帯に合わせて顔や胴体を断片的に見せました。木をたたく硬い音も、画面の跳ねる周期へ重なります。

制作には二台のカメラが使われました。一台がパフォーマンスをモニターへ送り、もう一台がその画面を撮ります。私たちが見るのは、故障した画面をもう一度撮った映像です。機械のずれが、身体を見るリズムを決めています。

再生時間を見てから、画面の外へ目を移す

展示室に入ったら、作品ラベルで再生時間を見ます。三分のループと二十分の一本作品では、待ち方が違います。映像の途中なのか、同じ場面へ戻ったのかも分かりやすくなります。

次に画面から目を離し、モニターの数、カメラ、スピーカー、椅子、部屋の明るさを見ます。音は隣の作品と混ざっているでしょうか。観客の影は画面に入るでしょうか。装置を一周すると、映像の筋だけでは拾えなかった作品の仕組みが残ります。

作品で見る

ナムジュン・パイク《TV Buddha》
TV Buddha / ナムジュン・パイク1974年
仏像、カメラ、現在の映像を返すモニター。この三点の配置までが作品になる
画像を拡大画像出典
ジョーン・ジョナス《Vertical Roll》
Vertical Roll / ジョーン・ジョナス1972年
同期のずれで走る黒い帯に、身体の断片と硬い打音を合わせた19分38秒の映像
画像を拡大画像出典
ナムジュン・パイク《Perpetual Mobile I within Fish Flies On Sky》
Perpetual Mobile I within Fish Flies On Sky / ナムジュン・パイク1990年代
天井近くまで広がる多数のモニターを、一本の映像を見るのとは違う距離で体験する
画像を拡大画像出典

よくある質問

ビデオアートは難解な映像作品ばかりですか?
短い反復や、カメラとモニターだけでできた作品もあります。筋がつかめないときは、再生時間、画面の数、カメラの有無のどれか一つを確認してください。
映画との違いはどこで見分ければいいですか?
映像だけでは明確に分けられません。上映時間、画面の数、会場での出入り、カメラやモニターの配置までが作品として設計されているかを見ると、違いをつかみやすくなります。
最初の入口にはどの作品が向いていますか?
《TV Buddha》が入りやすい作品です。仏像、カメラ、モニターという三つの要素を順番に見れば、閉回路映像の仕組みを追えます。次に《Vertical Roll》で、映像と音のリズムを比べてみてください。

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