1906年、テムズ川を強い色で描き直す

ドランは1906年、ロンドンでテムズ川周辺の景観を集中的に描きました。橋、川、船という伝統的な題材を選びながら、灰色の霧を鮮やかな色の斑点へ置き換えます。

建物の細部や正確な遠近を追うより、オレンジと青、赤と緑の反復で画面を組み立てました。都市の形を残しつつ、目に入る強度を色でつくり直しています。

見た色を写さず、必要な色を置く

水は青、建物は茶色という固有色に従わず、ドランは隣り合う色の強さを優先します。オレンジと青、赤と緑がぶつかり、都市の速度や騒音に近い感覚をつくります。

色は物の表面を説明する役から、画面を支える構造へ移りました。何色の建物だったかより、どの色同士が押し合うかを見ると、フォーヴィスムの『色彩の解放』を具体的に理解できます。

モネやターナーと並べると差が見える

同じロンドン景観でも、モネは霧の中で変わる大気を観察し、ターナーは光と蒸気を劇的に広げます。ドランでは絵具の色面そのものが前へ出ます。

三人の水面を並べ、建物の輪郭がどこまで残るか、色がどこで混ざるかを比べてください。ドランの水面では絵具の筆触がはっきり残り、色の配置が都市のリズムを作っています。

マティスとの共通点と違い

マティスとドランは、フォーヴィスム初期をともに牽引しました。ドランのロンドン連作では橋と川が色面の骨格になり、マティスでは人物と室内が色の関係を支えます。

運動名だけで同じ画風と考えず、何を骨格に選んだかを比べます。都市の外景と人物のいる室内で、強い色の使い道が変わります。

橋の下にある色を拾っていく

橋の暗いシルエットを目でなぞり、その下の水面へ移ります。オレンジの近くに青、赤の近くに緑が置かれ、川面が細かな色の帯に分かれています。現実の水が何色だったかを考える必要はありません。

空と建物の境目では、輪郭線より色の温度差が奥行きを支えています。橋、水面、空を行き来すると、ドランが景色を崩さずに色だけを大きく変えたことがよく分かります。

作品で見る

アンドレ・ドラン《チャリング・クロス橋(ロンドン)》
チャリング・クロス橋(ロンドン) / アンドレ・ドラン1906年頃
フォーヴィスムの都市色彩を示す基準作品
画像を拡大画像出典
アンリ・マティス《帽子の女》
帽子の女 / アンリ・マティス1905年
フォーヴィスム初期の人物表現を比較する作品
画像を拡大画像出典
J.M.W.ターナー《戦艦テメレール号》
戦艦テメレール号 / J.M.W. ターナー1839年
ロンドン景観表現の前史として有効な比較対象
この作品の解説画像を拡大画像出典

よくある質問

ドランはフォーヴィスムの中心人物ですか?
はい。マティスらと並ぶ中心作家の一人です。短い期間で強度の高い実験を行い、その後のモダンアートに大きく影響しました。
色が派手すぎて読み方がわかりません
まず色名で判断せず、隣り合う色の温度差を見ると画面の流れを追いやすいです。どこで衝突し、どこで落ち着くかを追うと構造がわかってきます。
最初にどこから見ると流れを追いやすい?
橋の水平線と水面の斜め方向を先に押さえると、画面全体のリズムを追いやすくなります。そこを軸に空へ視線を上げると、構造がわかりやすくなります。

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