最初の題名は《労働》だった

《都市の興隆》は1910年の作品で、もとの題名は《労働(Lavoro)》でした。都市の眺望を描いた風景画というより、名もない作業員の労働を歴史画ほどの大きさへ引き上げた絵です。

ボッチョーニ自身は、この作品を「労働、光、運動の大いなる総合」と呼びました。作品名だけでは見落としやすい「労働」を思い出してから、馬を押さえる腕や踏ん張る脚を見ると、渦の中身が具体的になります。

未来都市の中心に、馬がいる

舞台のミラノは工業都市でしたが、当時のイタリア全体はまだ農業国でした。メトロポリタン美術館の解説が指摘するように、ボッチョーニは近代の力を巨大な馬と御者で表しています。

中央の馬は輪郭が閉じず、赤、青、黄の短い筆触へほどけます。作業員の身体もその流れへ巻き込まれ、どこまでが人でどこからが馬か一目では切れません。赤い首筋から手綱と人の腕へたどると、混雑の中を走る力の向きがつかめます。

宣言を書き、作品で試した

1910年、ボッチョーニはカルロ・カッラ、ルイージ・ルッソロらと「未来派画家宣言」を起草し、続く技術宣言で同時代の生活を描く方針を示しました。《都市の興隆》は、その年に制作された最初期の大作です。

1911年末にパリでキュビスムに触れたあとは、画面を面へ分ける方法も取り込みました。ボッチョーニは分割した面を「力線」として使い、対象を動かします。1910年のこの絵は、その変化の直前にある作品です。

彫刻では、歩く人と周囲の空気をつないだ

1913年の彫刻《空間における連続性の唯一の形態》では、歩く人物の脚と、押しのけられた周囲の空気が一つの形になっています。《都市の興隆》で人と馬を筆触の流れへ溶かした問題を、立体で追い直した作品です。

ボッチョーニはイタリアの第一次世界大戦参戦を支持し、1915年に志願しました。翌年、騎兵演習中に落馬し、33歳で亡くなります。作品がたたえた速度と力は、戦争への積極的な立場とも隣り合っていました。

最初の三分は、赤い馬から足場へ

中央の赤い馬の頭と首を探し、手綱を握る作業員の腕へ進みます。そこから背景上部の青い足場へ目を上げると、手前の騒ぎと建ちつつある都市が一つにつながります。

赤と青の筆触がぶつかる場所も見ておきます。色を追ってから馬や人へ戻る。この往復で、見づらさを「未来派だから」で済ませず、画面が動きを作る手つきを確かめられます。

作品で見る

ウンベルト・ボッチョーニ《都市の興隆》
都市の興隆(The City Rises) / ウンベルト・ボッチョーニ1910年
旧題は《労働》。縦約2メートル、横3メートルの画面に建設現場を広げます
画像を拡大画像出典
フェルナン・レジェ《都市》
都市 / フェルナン・レジェ1919年
看板、建物、人物を平たい色面へ分け、別の方法で都市の密度を見せます
画像を拡大画像出典
ワシリー・カンディンスキー《コンポジション VIII》
コンポジション VIII / ワシリー・カンディンスキー1923年
円、線、三角形の配置だけで目を動かす、1920年代の抽象絵画
画像を拡大画像出典

よくある質問

ボッチョーニと未来派は同じ意味ですか?
同じではありません。未来派は複数の作家による運動で、ボッチョーニはその中核を担った一人です。
《都市の興隆》(都会の喧騒)が見づらいのはなぜ?
馬、作業員、筆触が重なり、輪郭が閉じていないためです。中央の赤い馬から手綱と人の腕、背景の足場へ視線を移すと、何が起きているかつかめます。
どこから見れば理解しやすい?
中央の赤い馬から外へ伸びる手綱と腕を追ってください。背景の足場へ目を上げると、労働の騒ぎと建設中の都市がつながります。

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