学生は、まず素材と色を試すことから始めた
ヴァルター・グロピウスが1919年にワイマールで創設したバウハウスは、工芸学校と美術学校を統合しました。学生は完成した様式を模倣する前に、素材の性質や色、形の関係を試す予備課程を通ります。
その後、金属、織物、舞台、印刷などの工房で手を動かしました。画家と職人を別々に育てず、考えることと作ることを同じ授業へ戻す。完成品と、そこへ至る試作の順序まで教えた点に、この学校の独自性があります。
学校は二度移り、14年で閉じた
政治的な圧力を受け、学校は1925年にワイマールからデッサウへ移りました。1932年にはベルリンへ移転し、翌1933年、ナチ政権下で閉校します。歴史は1919年からわずか14年間です。
デッサウの校舎が今日まで象徴になっている一方、学校そのものは安定した制度ではありませんでした。移転のたびに教育方針や運営も変わります。政治と資金の中で形を変え続け、一直線に完成した運動とは呼べません。
白くて幾何学的なら、すべてバウハウスではない
後世のイメージでは、白い壁、直線、三原色がバウハウスらしさとして目立ちます。しかし学校には、舞台衣装、織物、写真、実験的な文字組みなど、色も形も異なる仕事がありました。
共通していたのは外観より、素材を理解し、試作し、工房で作り、生活や生産へつなげる過程です。絵画、家具、タイポグラフィ、建築を別々の専門へ閉じ込めず、互いに行き来させました。
カンディンスキーとクレーも、教室では先生だった
カンディンスキーは色と形の関係を分析し、クレーは一点が動いて線になる過程や、リズムの生まれ方を授業で扱いました。二人の作品は違いますが、どちらも完成作をまねさせるより、形が生まれる仕組みを考えさせました。
《黄-赤-青》や《さえずる機械》を見るときも、教師の理論を図解しただけだと思わない方がよいでしょう。授業で分析した要素を、それぞれ別の感覚へ組み直している点に個性があります。
作品の横で、素材と用途を確かめる
椅子なら素材と座り方、ポスターなら文字の読み順、織物なら反復する模様を見ます。次に、量産を意識したものか、一点の実験なのかを確認する。外観に加えて、使う場面まで考えるのがバウハウスを見る近道です。
学校が残したのは一つの正解の形ではありません。素材を試し、構造を理解し、用途へ結びつける手順です。身の回りの椅子なら脚と座面、スマートフォンの画面なら文字と余白を同じ順序で見てみると、形が装飾だけで決まっていないことに気づけます。
作品で見る
コンポジション8 / ワシリー・カンディンスキー(1923年)
バウハウスの造形理論と連動する抽象作品
画像を拡大画像出典さえずる機械 / パウル・クレー(1922年)
線・リズム・機械的要素の交差がわかる作品
この作品の解説画像を拡大画像出典コンポジションII(赤・青・黄) / ピート・モンドリアン(1930年)
同時代の幾何学的抽象との比較に有効な作品
画像を拡大画像出典 よくある質問
- バウハウスは建築学校だったのですか?
- 建築だけではありません。絵画、工芸、タイポグラフィ、舞台などを横断した総合的な教育機関でした。
- 閉校したのに、なぜ影響が続いたのですか?
- 教員と卒業生が各国に移り、教育方法と設計思想を広げたためです。学校としては短命でも、方法論は長く残りました。
- 最初は作品と制度、どちらから学ぶのがいい?
- 最初は作品から入って問題ありません。気になった作品で色、線、素材のどれが目に残ったかを確かめ、そのあとで工房や授業とのつながりを調べると、制度の話が作品から離れません。
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