撮影場所は、ニューヨーク郊外のママロネック

メトロポリタン美術館の作品記録は、ニューヨーク州ママロネックの森にある池を写したものだと伝えています。ニューヨーク近郊で見つけた風景です。

横長の水面、木の列、その隙間の月。構成要素は少なく、場所を説明する標識も人物もありません。具体的な地名を知ったあとでも、写真は地図より記憶の中の風景に近く見えます。

一度の露光のあとに、多重印刷で仕上げた

この一枚は、色を施したプラチナ・プリントです。美術館は、スタイケンが多重印刷という手間のかかる方法を用いたと説明しています。シャッターを一度切れば完成する像ではありません。

暗部の濃さも、月のにじみも、水面に残す反射も、プリントの工程で調整されています。刷り方そのものが画面の空気を決めています。

色を足しているのに、情報は増えすぎない

加えられた色は、鮮やかな青空や緑の木々を説明するためのものではありません。青緑、褐色、鈍い白が狭い範囲で移り変わり、輪郭を目立たせるより互いに溶かしています。

色があるから現実に近づくとは限らない。むしろ色を抑えたことで、場所や時刻の説明から少し離れ、以前どこかで見た夜のような曖昧さが残ります。

ホイッスラーの《ノクターン》と同じ、黄昏の調子

メトロポリタン美術館は、微妙な色調をホイッスラーの《ノクターン》になぞらえ、「黄昏、曖昧さ、暗示」の作品と説明しています。何が写っているかをはっきり列挙するより、全体の調子をそろえる発想です。

月も中央を強く照らしません。木々の奥に小さく残り、池の反射も弱い。光源を主役にしすぎないため、暗い部分のわずかな差が長く目に残ります。

月を見たら、同じ黒に見える場所を比べる

最初に月の位置を確認したら、木の幹、水面、左右の岸を比べます。ひとまとめに黒く見えた場所にも、青緑、茶、灰色が残っています。画面を明るくして答えを探すより、目が慣れるのを待つ方が向いています。

最後に、これが手で色を加えたプリントだと思い出してください。この暗さは、作者が仕上げに残した濃度です。「見えない」部分も制作上の判断として見直せます。

作品で見る

エドワード・スタイケン《The Pond—Moonlight》
The Pond—Moonlight / エドワード・スタイケン1904年
多重印刷と手で加えた色によって、暗闇の濃度まで仕上げられた夜景
画像を拡大画像出典
エドワード・スタイケン《The Flatiron》
The Flatiron / エドワード・スタイケン1904年
都市でも風景でも、スタイケンが一貫して『気分の像』を作っていたことがわかる比較対象
この作品の解説画像を拡大画像出典

よくある質問

これは普通の白黒写真に色を塗ったのですか?
土台はプラチナ・プリントですが、単純な後塗りではありません。多重印刷を行い、色を加えながら濃度と調子を組み立てています。
《The Pond—Moonlight》と《The Pond - Moonrise》は別作品ですか?
同じイメージは複数の題名で紹介されてきました。メトロポリタン美術館は《The Pond - Moonrise》とし、画像資料には《The Pond—Moonlight》の表記もあります。
撮影場所はどこですか?
ニューヨーク州ママロネックの森にある池です。ニューヨーク市の北東、ロングアイランド湾沿いの地域です。

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