《The Steerage》は、『船の場面』より『関係の配置』として見ると開いてくる
この作品でまず目に入るのは人々ですが、見続けるとそれだけではありません。梯子、ロープ、デッキの線、丸い帽子、白い布が、画面の中で厳密に配置されています。
つまり《The Steerage》は、出来事の写真というより、関係が整理された画面でもあります。人の集まりと船の構造が一緒にひとつのリズムを作っているところが、強さの核です。
この写真が重要なのは、社会の差と構図の強さが一緒に見えるから
タイトルの steerage は、かつて船の最下層に近い廉価な客室を指しました。この写真では、異なる位置にいる人々が、船の構造によってはっきり分けられて見えます。
ただ、この作品は社会問題の説明写真にとどまりません。人々の配置がそのまま画面の秩序になっているので、階級の差と造形の強さが同時に感じられます。そこが、この写真が長く語られる理由です。
スティーグリッツ自身にとっても、この写真は転換点になった
スティーグリッツはもともと、霧や雪、大気の層を生かした写真でも知られます。ところが《The Steerage》では、雰囲気よりも構造が前に出ます。
後からこの作品は、彼の最初の近代的な写真のひとつとして繰り返し扱われるようになりました。写真が絵画的な気配だけでなく、画面そのものの構成で立てることを、はっきり示したからです。
1911年以後の再提示が、この作品を『名作』として固定していった
《The Steerage》は1907年に撮られましたが、その意味がすぐに確定したわけではありません。のちに『Camera Work』や『291』の文脈で示されることで、写真史の中の位置づけが強くなっていきます。
ここも面白い点です。名作は、撮られた瞬間だけで完成するわけではありません。どの場でどう見せられたかによって、作品の意味はさらに濃くなります。
見るときは、最初に『線』を追ってから、人を見る
この写真を人物の表情から読むと、少し散漫に感じるかもしれません。むしろ最初は、斜めに走る梯子やロープ、デッキの区切り線を追う方が画面の骨組みを先に拾えます。
その線の流れがつかめると、次に人々の位置の違いが効いてきます。構図が先、物語があと。その順で見ると、《The Steerage》の強さを追いやすくなります。
作品で見る
The Steerage / アルフレッド・スティーグリッツ(1907年)
社会的な差と画面の構造が、一枚の中でぴたりと噛み合う代表作
画像を拡大画像出典The Flatiron / エドワード・スタイケン(1904年)
大気と色調の重なりを重視した写真と比べると、《The Steerage》の構造の強さを追いやすい
詳しく読む画像を拡大画像出典Winter, Fifth Avenue / アルフレッド・スティーグリッツ(1892-93年頃)
初期の大気的な都市写真と比べると、《The Steerage》で構図が前に出る変化を追いやすい
画像を拡大画像出典 よくある質問
- 《The Steerage》は、社会批評の写真ですか?
- そう読めますが、それだけではありません。社会的な差が見える一方で、その差が非常に強い構図として整理されている点も重要です。
- なぜこの写真がモダンだと言われるのですか?
- 雰囲気や情緒だけでなく、線や形の関係そのものが画面の主役になっているからです。そこが近代的な写真として大きく評価されています。
- この写真の緊張は、人と線のどちらから追うとつかみやすいですか?
- まず梯子とロープの斜線から追うと、構図の骨組みが先につかめます。そのあと人々の位置へ戻ると、社会的な差がどう画面の秩序に変わっているかを追えます。
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