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現代美術アプロプリエーション

アプロプリエーションは、すでに存在する画像、物、記号、スタイルを取り込み、別の文脈で提示する方法です。

美術が一方向に進歩する物語を疑う

モダンアートでは、新しさ、純粋性、前進という感覚が強く働きました。より新しい形、より根本的な抽象、より純粋な媒体へ進むという語り方です。ポストモダンは、その一本道を疑います。

現代アートでは、過去の様式、広告、漫画、商品、写真、映像、既存の名作が混ざり合います。古いものを超えるだけでなく、借り直し、組み替え、別の場所に置くことで意味を作る。ここにポストモダン的な見方があります。

引用が、元のイメージの意味を動かす

アプロプリエーションは、すでにあるイメージや物を借りて別の文脈へ置く方法です。元のイメージを隠すのではなく、むしろ『どこかで見たことがある』感覚を作品の一部にします。

大切なのは、借りたこと自体より、借りたあとに何が変わるかです。サイズ、場所、素材、反復、説明文、展示空間が変わると、同じイメージでも社会への距離が変わります。

ポップアートが、商品と広告を借り直す

リキテンスタイン《Whaam!》は、コミックの視覚をそのまま巨大絵画へ移したように見えます。しかし、美術館で見ると、読んで消費する漫画とは違う距離が生まれます。派手な爆発場面なのに、画面はどこか冷静です。

ウォーホル《Campbell's Soup Cans》も同じです。商品パッケージを描いたから面白いのではなく、商品棚のような反復が美術館で別の速度を持つから面白い。ポストモダン的に見ると、作品は社会に流通する記号をどう借り直すかの実験になります。

コンセプチュアルアートは、言葉と定義も借りる

コスース《One and Three Chairs》では、椅子そのもの、椅子の写真、椅子の定義が並びます。辞書の言葉は作者がゼロから作ったものではありません。すでにある言語のルールを作品の中へ持ち込んでいます。

このように、ポストモダン的な鑑賞では、作品の素材を絵具や石だけに限定しません。制度、記号、説明文、写真、商品、過去の作品も素材になりえます。

元の場所と、いま置かれた場所を比べる

ポストモダン的な作品を見るときは、まず元の場所を想像します。広告なら街や雑誌、コミックならページ、商品なら店頭、定義なら辞書、名画なら美術史です。

次に、今どこに置かれているかを見ます。美術館、ポスター、公共空間、巨大なキャンバス、展示室の説明文。その移動によって何が強調され、何が抜け落ちたかを考えると、引用や複製の作品は一気に読みやすくなります。

作品で見る

ロイ・リキテンスタイン《Whaam!》
Whaam! / ロイ・リキテンスタイン1963年
漫画の形式を巨大絵画へ移し、借用されたイメージの距離感を見せる代表作
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アンディ・ウォーホル《Campbell's Soup Cans》
Campbell's Soup Cans / アンディ・ウォーホル1962年
商品パッケージの反復を通じて、消費社会のイメージが美術へ移る瞬間を見せる作品
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ジョセフ・コスース《One and Three Chairs》
One and Three Chairs / ジョセフ・コスース1965年
物、写真、辞書の定義を並べ、言葉も作品の素材になることを示すコンセプチュアルアート
詳しく読む画像を拡大画像出典

よくある質問

ポストモダンアートは、何でもありという意味ですか?
何でもありではありません。重要なのは、何を引用し、どの文脈へ移し、そこでどんな意味のずれを作るかです。自由に混ぜることより、ずれの設計が問題になります。
アプロプリエーションと盗作は違いますか?
重なる議論はありますが、アプロプリエーションでは借用そのものが作品の主題になることが多いです。元の文脈が見えることで、社会や制度への批評が生まれます。
ポップアートもポストモダンですか?
ポップアートはポストモダンの用語だけで説明しきれませんが、商品イメージや複製文化を借り直す点で、ポストモダン的な見方と強くつながります。

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次に1本読むスープ缶が美術館へ入ったとき、何が変わったのか

同じスープ缶が、店の棚を思わせる等間隔で並んでいます。別の大画面では、コミックの爆発音と網点が拡大されています。戦後の街を埋めたパッケージ、広告、テレビ、雑誌を、ポップアートは美術館へ運び込みました。

順番に読む近代社会の変化からアートを読む

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アンディ・ウォーホル《Campbell's Soup Cans》

1950〜60年代 / 英米中心

スープ缶が美術館へ入ったとき、何が変わったのか

背景
戦後の大量消費、広告、テレビ、雑誌文化の拡大
美術の変化
商品や大衆イメージが、美術の中心的な素材になった

同じスープ缶が、店の棚を思わせる等間隔で並んでいます。別の大画面では、コミックの爆発音と網点が拡大されています。戦後の街を埋めたパッケージ、広告、テレビ、雑誌を、ポップアートは美術館へ運び込みました。

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椅子、椅子の写真、椅子の定義を並べたジョセフ・コスース《One and Three Chairs》

1960年代以後 / 米欧

椅子は一つ、それとも三つ? 記号論で見る現代アート

思想の鍵
意味は、もの単体ではなく記号の関係から生まれる
美術の変化
物、写真、言葉、タイトル、記録が同じ画面で競合する

展示室に、椅子が一脚あります。その横には椅子の写真と、辞書から引いた「chair」の定義。どれが本当の椅子で、どこまでが作品なのでしょう。《One and Three Chairs》は、物、像、言葉の関係を目の前で比べさせます。

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ジョセフ・コスース《One and Three Chairs》

20世紀以後 / 国際

白い壁は、本当に中立なのか

意味
白い壁と余白で作品を日常から切り離して見せる展示形式
見る鍵
作品だけでなく、壁、床、照明、距離、動線を見る

白い壁、均一な光、作品同士の広い間隔。何も主張しない背景に見えますが、この部屋へ入った物は日常から切り離され、特別な作品として見え始めます。ホワイトキューブでは、壁、床、照明、鑑賞者との距離も、作品の受け取り方を作っています。

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ガボンのベツィ=ファンの作家による木製の守護頭部ンロ・ビエリ

20世紀後半以後 / 国際

作品はどこから来て、誰の声で語られているのか

見る対象
作品の形だけでなく、由来、所有、展示、語り手を見る
接点
オリエンタリズム、プリミティヴィズム、返還、グローバル美術

展示室の作品は、どこから、どんな経路でここへ来たのでしょう。ラベルは誰の言葉で書かれ、元の所有者や用途はどこまで残っているでしょう。ポストコロニアルな見方は、植民地時代を過去として閉じず、作品の移動と現在の展示に残る力関係を読みます。

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ゲリラ・ガールズの展示風景

1960年代以後 / 国際

便器もポスターも、なぜ美術館で作品になるのか

対象
作品だけでなく、美術館、展示、批評、市場、作者性を問う
入口
何が見えていて、何が制度によって隠れているかを見る

便器が展覧会に拒否され、女性作家の少なさを示すポスターが美術館へ向けられます。どちらも、目の前の物だけでは話が終わりません。誰が作品を選び、どこに置き、価値を語るのか。

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