絵具の外へ、泥、電球、ベルを持ち出す

具体美術協会は1954年、吉原治良を中心に関西で結成されました。キャンバスへ絵具を置く制作とともに、身体、屋外空間、光や音まで作品へ持ち込みます。

キャンバス、泥、電球、ベル、舞台、庭。使った場所と素材を並べるだけで、絵画の一派という枠からはみ出します。具体は、美術が起きる場所そのものを増やしたグループでした。

破った紙には、身体の通り道が残る

白髪一雄が泥の上で身体を動かしたことや、村上三郎が紙を突き破った行為はよく知られています。派手な動きに目を奪われたら、行為が終わったあとに残る泥と紙にも目を戻します。

行為のあと、紙は繊維に沿って裂け、泥は重さに従って広がり、絵具は身体の軌跡を留めます。作家の動きだけでは形を決められません。紙や泥の性質も、完成した姿に入り込んでいます。

田中敦子は、線を電球と配線へ変えた

田中敦子の仕事では、線、光、音、配線が空間全体へ広がります。具体を激しいアクションの運動として覚えていると、光が周囲を静かに変える作品を見落とします。

《Tokyo Work》では、光る線の間へ視線が入り、周囲の壁や人まで違って見えます。正面から眺める平面というより、電球、配線、光に囲まれる空間です。

庭や舞台も、作品の一部になった

具体は屋外美術展や舞台での実験も積極的に行いました。作品を白い壁の中へ閉じ込めず、天候、通行する人、場所の条件まで巻き込んでいきます。

現在の目には、インスタレーションやパフォーマンスの先駆けにも映ります。当時の作家たちが使ったのは、目の前にあった庭、舞台、風や日差しでした。その場所を使い切った結果が、後の実践と重なっています。

残った紙や泥から、起きたことをたどる

紙、泥、絵具、電球。その中から素材を一つ選び、身体が何をし、どんな痕跡が残ったのかを追います。作品名は、そのあとで読みます。

展示されている完成品は、出来事の終点でもあります。制作時の写真や記録映像があれば、現在の姿と見比べてください。見えない行為が、残った傷や皺から戻ってきます。

作品で見る

田中敦子《Tokyo Work 1955-2007》
Tokyo Work 1955-2007 / 田中敦子1955/2007年
色とりどりの電球を配線が結び、壁と床の境目を越えて光が広がります。
画像を拡大画像出典

よくある質問

具体はパフォーマンスアートと同じですか?
身体を使う作品には、後のパフォーマンスアートと重なる部分があります。具体の活動には、絵画、屋外展示、舞台、光を使う空間作品も含まれます。
最初はどの作家から入るとわかりやすいですか?
白髪一雄と田中敦子から入るとわかりやすいです。身体の強さと空間の広がりという、具体の二つの重要な面を追いやすくなります。
もの派とはどう違いますか?
具体は行為と素材の出会いに強いエネルギーがあります。一方もの派は、物と物、物と場の関係をより静かに見せる傾向があり、時代も重心も少し違います。

作家・時代・見方を選ぶ

美術史の順番日本からアートに入ってみる

西洋美術の年表より、日本の作品から始めたいときに。

同じテーマ具体

同じテーマの記事をまとめています。

ほかの記事を探す

作品・作家

近い作品・作家の記事

同じ作家や時代を扱う記事です。

李禹煥《Relatum - The skyroad》

1960年代末〜1970年代 / 日本

もの派入門:『何かを作る』より『ものがそこにある』を見つめる美術

石のそばに鉄板が置かれている。ガラス板が石の重みを受けている。『これで完成なの?』と思ったら、材料へ近づき、接している場所と間の空白を見てみてください。もの派は、作家が何を作ったかより、元からある物が出会ったときに何が起きるかを見せました。

記事を読む
ヨーコ・オノ《Wish Tree》

1960年代以後 / 日米

ヨーコ・オノ入門:作品を見る人が、作品の一部になるとき

木に願いを結ぶ。舞台に座る人の服を切る。短い指示文を頭の中で実行する。ヨーコ・オノの作品は、観客が応じるまで形が決まりません。展示物が何を表すかより、自分へどんな動詞が渡されたかを考えると、《Wish Tree》の静けさと《Cut Piece》の緊張がはっきり分かれます。

記事を読む

読む順番

流れでつかむ

一枚ずつより先に全体の流れを置きたいときのために、時代の大きなうねりをつかむ記事をまとめています。

特集の記事をすべて見る
クロード・モネ《印象、日の出》

19世紀後半 / フランス

一瞬の光と日常を、絵の主役にした印象派

時代
19世紀後半のフランスを中心に広がった美術運動
起点
1874年、パリで開かれた第1回印象派展

港の霧に太陽が浮かび、木漏れ日が人々の服に落ち、踊り子は舞台裏で身体を休めます。印象派は神話や歴史の大事件に加え、移ろう光と同時代の日常を絵の中心へ置きました。モネ、ルノワール、ドガでは、同じ運動の中でも見る場所が違います。

記事を読む

テーマを広げる

関連するテーマ

同じタグや視点を持つ記事をまとめました。

ジョーン・ジョナス《Vertical Roll》

1970年代以後 / アメリカ

画面のずれに、身体を合わせる

《Vertical Roll》を再生すると、黒い帯が画面を何度も横切ります。頭が半分消え、胴体は別の位置から戻ってくる。古いテレビなら調整したくなる同期の乱れを、ジョーン・ジョナスは作品の拍子に変えました。

記事を読む
ジュディ・シカゴ《The Dinner Party》

作品ガイド

一席を見たら、床の名前へ

三角形の各辺は48フィート、約14.6メートルあります。テーブルには39の席、白い床には999人の名前。合わせて1,038人の女性が作品に組み込まれています。写真では皿へ目が向きがちですが、ランナー、杯、食器、床の文字まで見て初めて一席になります。

記事を読む
ゲリラ・ガールズの展示風景

1970年代以後 / アメリカ中心

フェミニスト・アート入門:『誰が歴史に残るのか』を作品で問い直す

美術館には女性を描いた裸体画がたくさんある。それなのに、展示される女性作家は少ない。この食い違いを短いコピーと数字で突いたのが、ゲリラ・ガールズでした。フェミニスト・アートは、絵の題材から展示室の仕組みまで問い直します。

記事を読む

参照した資料