美術のことば / 絵肌
インパスト
インパストは、イタリア語で「生地」や「練ったもの」を意味する言葉に由来します。絵の具を厚く置き、筆やパレットナイフの跡が乾いたあとも残る塗り方です。正面写真では色に見える部分が、展示室では小さな突起として光を拾います。
ひとことで言うと
インパストの意味
インパストは、絵の具を比較的厚く置いて、表面に凹凸をつくる技法です。色と絵肌の両方が、見え方や空気感を左右します。
作品でつかむ
Self-Portrait
1889年、65×54.2センチ。背景のうねる筆跡が、止まった顔の周囲で動き続ける
- 画面へ斜めに当たる光で、盛り上がりを探す
- 筆かパレットナイフか、跡の形を見る
- 全体が厚いのか、ハイライトだけ厚いのかを分ける

乾いたあとも、筆とナイフの跡が残る
インパストでは、下地が隠れるほど絵の具を盛り、表面に凹凸を作ります。筆の毛が押した筋や、パレットナイフで引いた平らな稜線が、そのまま乾いて残ります。
盛り上がりは影も作ります。見る位置や照明が変われば、小さな影と反射も動くため、印刷物や正面からの画像だけでは質感をつかみにくい技法です。
昔は宝石の光、ゴッホは画面全体の動きに使った
ナショナル・ギャラリーの解説では、レンブラントなどが衣装のハイライトや宝石を目立たせるため、部分的に絵の具を盛った例が挙げられています。光らせたい箇所だけに使う方法です。
後のゴッホは、装飾的・表現的な目的で広い範囲へインパストを使いました。空、髪、ひげ、畑の筆跡が別々の方向へ走り、描かれた物と塗った動作が同時に見えます。
実物では、正面から半歩だけ横へ動く
展示室で斜めから見ると、盛り上がった箇所の片側が光り、反対側に細い影ができます。作品へ近づかなくても、正面から半歩ずれるだけで平らな部分との差を確かめられます。
オルセー美術館の《自画像》では、顔は正面で動かず、髪とひげ、背景のアラベスク状の線がうねります。色だけを追わず、筆跡の向きを指で空中になぞると、顔の静止と周囲の動きが分かれます。
この言葉が見える作品
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19世紀後半 / フランス
ゴッホの絵は、感情のままに描かれてはいない
《星月夜》の空は激しくうねりますが、村の家々は低く静かに並びます。《ひまわり》では黄の幅を使い分け、花と背景を同じ色の中で分けています。ゴッホを「感情のままに描いた天才」とだけ見ると、こうした制御が隠れます。
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19世紀後半 / フランス中心
白い服に青が入る。モネは光をどう色にしたか
- 何がすごい?
- 光と時間で変わる色を、絵の主題にした
- 色使い
- 影や白い服も一色で固定せず、周囲の光の色を置く
《日傘の女性》の白い服には、空の青、草の緑、日の光の黄が細かな筆触で入り込んでいます。モネにとって色は、時刻や天気とともに変わるもので、物に貼られた名前だけでは足りません。
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19世紀末 / ヨーロッパ
同じ印象派から、三人は別の方向へ進んだ
ゴッホは病室の窓から見た景色をそのまま写さず、夜空と村を組み替えました。スーラは細かな色点に加え、動かない人物の並びまで計画しました。セザンヌは山と空の境を閉じず、白い下地も残しています。
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