美術のことば / 絵肌
筆致
ゴッホの顔のまわりでは短い線がうねり、モネの港では色の跡が霧のように重なります。この、画面に残った筆の動きが「筆致(ひっち)」です。向き、速さ、厚みを見ると、同じ題材でも画家によって空気が変わる理由を言葉にできます。
ひとことで言うと
筆致の意味
筆致(ひっち)とは、筆や道具が画面に残した線、勢い、向き、絵の具の置き方のことです。
作品でつかむ
自画像
筆の向きと細かな刻みが、そのまま顔の緊張や空気まで運んでくる
- 読み方は『ひっち』。描きぶり、筆づかい、筆の勢いに近い
- 線の向き、速さ、厚み、力の入り方を見る
- 筆致を見ると、画家の描き方や画面の緊張がわかる
- ゴッホ、モネ、セザンヌのように筆の動きが見える作品でつかみやすい

筆の動きは、乾いた絵具の跡に残る
筆致は、筆や道具が画面に残した動きの跡です。滑らかに塗られた絵でも、近づけば、押す、払う、刻む、なぞるといった手の動きが見つかります。
「描きぶり」「筆づかい」「筆の勢い」と言い換えると近いでしょう。何を描いた絵かを確かめたあと、絵具をどう置いたかへ目を移すための言葉です。
筆跡を集めると、筆致が見えてくる
筆跡は一本ずつの跡を指し、筆致はその集まりから感じる描き方の性格を指します。近い言葉ですが、観察した事実と画面全体の印象を分けるときに便利です。
「短い筆跡が並ぶ」は目に見える事実です。そこから「細かく震える筆致が画面を張りつめさせる」と進めば、筆の跡が作品全体へ与えた効果まで説明できます。
向き、速さ、厚み、密度を比べる
同じ方向に流れる筆の帯を探します。空は横へ流れ、草は縦に立ち、顔の線は頬を回り込む。場所ごとの向きが分かると、筆が形や動きを支えていることに気づきます。
絵具の薄い場所と、盛り上がった場所も見比べます。迷ったら、向き、速さ、厚み、密度の四項目から一つ選んでください。筆の密度が急に上がる場所には、画家が強調したかった形が隠れていることがあります。
ゴッホとモネでは、筆の速度が違う
ゴッホの自画像では、短い筆跡が顔の周囲を渦のように巡ります。輪郭を固定するための線ではありません。画面を細かく振動させ、顔立ちと一緒に張りつめた空気を作ります。
モネ《印象、日の出》では、港の形が霧へ溶け、橙色の太陽と水面の短い筆跡が目に残ります。ゴッホの線が画面を動かすのに対し、モネの筆は湿った光をほどいて見せます。
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記事を読む筆致についてよくある質問
- 絵で筆致とは何を見る言葉ですか?
- 線の向き、筆の速さ、絵具の厚み、筆跡の密度を見る言葉です。描かれた題材から、手の動きへ視線を移すときに使います。
- 筆致とはどういう意味ですか?
- 筆致(ひっち)とは、筆や道具が画面に残した線、勢い、向き、絵の具の置き方のことです。描かれた物から手の動きへ目を移すときに使います。
- 筆致の読み方は何ですか?
- 筆致は「ひっち」と読みます。筆の跡から感じられる速さ、力、密度や、画面全体の調子まで含む言葉です。
- 筆致を言い換えると何ですか?
- 描きぶり、筆づかい、筆の勢いと言い換えると近いです。一本の跡そのものより、跡の集まりから感じる画面の性格を表します。
- 『ひっち』は筆致と書きますか?
- 絵の表面に残る筆の動きや描きぶりを指す場合は、一般に『筆致』と書きます。読み方は『ひっち』です。
- 筆致と筆跡はどう違いますか?
- 筆跡は筆が残した跡そのものを指し、筆致はその跡から感じられる描き方の性格まで含みます。たとえば短い筆跡が集まって、震えるような筆致に見える、という使い方です。
- 絵で筆致を見るときはどこを見ればいいですか?
- 線の向き、速さ、厚み、密度を見るとわかりやすいです。空、草、顔、背景で筆の動きがどう変わるかを見ると、画家がどこを強く見せたいかも追いやすくなります。
