美術のことば / 主題と記号
イコノグラフィー
ひげの男が鍵を持っていれば聖ペテロ、車輪と一緒に描かれた女性なら聖カタリナかもしれません。持ち物は名前の代わりになります。ただし、鍵が一つあるだけで決めず、衣装、場所、隣の人物まで合わせて読みます。
ひとことで言うと
イコノグラフィーの意味
イコノグラフィーは、作品に描かれた人物、主題、持ち物、身振りを特定し、その組み合わせを調べる方法です。美術史では「図像学」または「図像研究」と訳されます。
作品でつかむ
民衆を導く自由の女神
三色旗、フリジア帽、裸足の女性。1830年の市民と「自由」の人格化が一人に重なる
- 頭、両手、足元にある物を順に確認する
- 同じ持ち物がほかの作品でどう使われるか比べる
- 一つの記号で断定せず、題名や制作地も照合する

最初の仕事は、「誰が何をしているか」の特定
イコノグラフィーは、まず人物と主題を特定します。光輪があるか、何を持っているか、どの出来事が描かれているかを、聖書、神話、同時代の図像と照合します。
次に、同じ主題が時代や地域によってどう変わったかを比べます。自由を示す帽子も、聖人を示す道具も、いつでもどこでも同じ意味とは限りません。
頭、両手、足元の順で探す
頭には光輪、冠、帽子。手には鍵、剣、本、花。足元には倒した敵、車輪、動物。作者が人物を見分けてもらうために置いた「属性」は、この三か所へ集まりやすくなります。
見つけた物をすぐ象徴へ置き換えず、画面内での使われ方も見ます。剣を持つ、剣で傷つけられる、足元に剣が置かれる。この違いで人物の役割は変わります。
《民衆を導く自由の女神》では、帽子と旗が名前を告げる
ドラクロワの女性は、1830年7月革命のバリケードを進む群衆の中にいます。右手には三色旗、頭には古代ローマの解放奴隷に由来するフリジア帽。これらが「自由」という名を補います。
ここでアレゴリーとの違いも分かります。女性が「自由」を人格化していることがアレゴリー。三色旗や帽子を手掛かりに、その人物と主題を特定する作業がイコノグラフィーです。
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