美術のことば / 主題と記号
アレゴリー
月桂冠をかぶり、ラッパと本を持つ女性がいたら、実在人物の肖像とは限りません。フェルメール《絵画芸術》の女性は、歴史を司るムーサ、クレイオの姿を借りています。アレゴリーでは、人が目に見えない考えの役を引き受けます。
ひとことで言うと
アレゴリーの意味
アレゴリーは、抽象的な概念や思想を、人や場面、物語に置き換えて表す方法です。
作品でつかむ
絵画芸術
モデルは歴史のムーサ、クレイオに扮する。地図、ラッパ、本が、室内を「絵画芸術」の寓意へ変える
- 人物が実在の誰かか、概念の役を演じているかを分ける
- 持ち物を一つずつ調べ、同じ方向を示すか確かめる
- 題名と制作当時の図像集を手掛かりにする

アレゴリーでは、人物が概念の役を演じる
自由は女性、時間は老人、勝利は翼のある人物。このように、姿のない考えを人や物語へ置き換える表現がアレゴリーです。日本語では「寓意」や「寓意表現」と呼ばれます。
肖像画との違いは、その人自身より、人物が代表する考えに重点があることです。ただし見た目だけでは決められません。題名、持ち物、同時代に共有された約束事を合わせて確認します。
持ち物が一つの意味へ集まるかを見る
人物の頭、両手、足元を見ます。冠、鍵、剣、本、楽器、動物などが、それぞれ同じ概念を指しているなら、偶然の小道具ではない可能性が高くなります。
一つの物だけで断定しないことも大切です。本を持つ人が全員「歴史」ではありません。月桂冠、ラッパ、本という組み合わせのように、複数の特徴と作品名を照らし合わせます。
《絵画芸術》では、モデルがクレイオになる
ウィーン美術史美術館は、《絵画芸術》のモデルを歴史のムーサ、クレイオと説明しています。背後には、南北分裂前のネーデルラント17州を示す地図。描かれた画家は、歴史を記録し国の名声を残す仕事と結びつきます。
ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》では、胸をあらわにした女性が現実の群衆と一緒にバリケードを越えます。彼女は一人の市民であると同時に、三色旗とフリジア帽を持つ「自由」の人格化でもあります。
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19世紀前半 / フランス
旗の下で、群衆はどちらへ進むのか
赤・白・青の旗ばかり見ていると、足元の光景を見落とします。裸足、落ちた靴、倒れた兵士。その上を市民と「自由」の女性像が進んでくる。描かれたのは1789年のフランス革命ではありません。
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18世紀末〜19世紀 / ヨーロッパ
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ドラクロワの群衆は旗の下へ押し寄せ、ターナーの船は嵐の中で輪郭を失います。フリードリヒの人物は、霧の山を前に立ち止まったままです。ロマン主義が扱ったのは、甘い感傷に限りません。
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象徴主義入門:見えるものの奥にある“意味”を描く時代
《死の島》では、白い舟が切り立つ岩の間へ進んでいます。行き先の説明も、舟に立つ人物の顔も見えません。それでも静けさと不安は伝わります。象徴主義の絵は、物語の正解を当てる前に、色や余白が作る気分から入れます。
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