題名は《当時三美人》、三人には名前がある
このページの画像は、ボストン美術館所蔵本(21.6382)です。英語名はThree Beauties of the Present Day、日本語では《当時三美人》と呼ばれます。《寛政三美人》と紹介されることもありますが、画像の所蔵情報に対応する題名を使います。
描かれたのは富本豊ひな、難波屋きた、高島ひさ。三人とも同時代に名を知られた女性で、名前のない理想像ではありません。「誰か」を確かめてから見ると、似た顔の小さな違いを探す理由がはっきりします。
大首絵は、目と手を見比べやすい
歌麿は、顔から上半身を大きく扱う美人大首絵で知られます。背景を詳しく描かないぶん、細い目、口元、髪の生え際、袖から出た手が目に残ります。メトロポリタン美術館も、歌麿の女性像では手と目が気質を伝えると説明しています。
三人の輪郭を一度に比べるより、初めは目だけを横に追います。二周目は手、三周目は首の角度。見る場所を一つに絞ると、共通する型の中に個別の動きが出てきます。
高島ひさは、別の版画にも登場する
大英博物館には、高島ひさを一人で描いた歌麿の版画があります。同館の作品情報によれば、ひさは餅屋を営む高島長兵衛の娘で、茶店で働く姿を描かれました。その版画でも、扇を持つ手と雲母摺りの背景が人物を引き立てます。
ひさは三人組の中だけに登場した人物ではありません。別の版画を見た人も、名前と顔を結びつけられました。《当時三美人》は、一枚の美人画であると同時に、複数の版画へ続く人気者の像でもあります。
似ていることも、違っていることも見落とさない
三人とも、細長い顔、細い目、小さな口で整えられています。現代の似顔絵のように、違いを大きく誇張した作品ではありません。歌麿が共有した美人の型を無視して「写実的な肖像」と呼ぶと、かえって画面を読み違えます。
同じ顔として片づけるのも早すぎます。顔の向き、視線、指先、着物の重なりは別々です。型と個人差が一枚の中でどう折り合っているかを見ます。
最初の一分は、目、手、首の順で見る
三人の目を左から右へ追い、次は手の形だけを比べます。最後に首がどちらへ傾いているかを確かめます。眉、口、着物まで一度に見分けようとすると、違いが散ってしまいます。
そのあと少し離れ、三つの頭が作る三角形と着物の色を見ます。細部では三人を分け、全体では一組にまとめる。近づいたり離れたりすると、歌麿の配置がよくわかります。
作品で見る
よくある質問
- 歌麿の美人画は理想化しすぎていませんか?
- 細長い顔や小さな口には、歌麿が共有した美人の型があります。ただし目、手、首の角度は同じではありません。理想化と個人差の両方を見る必要があります。
- 《寛政三美人》と《当時三美人》は同じ作品ですか?
- このページの画像は、ボストン美術館所蔵の《当時三美人》(Three Beauties of the Present Day、21.6382)です。《寛政三美人》と紹介される場合もありますが、画像の所蔵情報に対応する題名を使っています。
- 最初はどこから見ると楽しめる?
- 三人の目だけを横に見比べ、次に手、首の傾きへ移ってください。同じ箇所を一つずつ比べると、共通の型と個人差を分けて見られます。



