最初の手がかりは、手前のカーテン

画家とモデルの間へすぐ目を運びたくなりますが、その前に大きな布と空いた椅子があります。幕の隙間から、整えられた場面をのぞいている感覚です。

床のタイルは奥へ続き、カーテンと椅子は手前に重なる。平らな画面の中に、私たちのいる場所、画家のいる場所、モデルの立つ場所という三つの距離ができます。

月桂冠、ラッパ、本――モデルはクレイオ

ウィーン美術史美術館は、女性を歴史のムーサであるクレイオと説明しています。目印は月桂冠、名声を告げるラッパ、そして歴史を書き留める本です。

衣装だけを見れば、ポーズを取るモデルです。三つの持ち物が彼女を「歴史」へ変え、アトリエに寓意が入り込みます。

壁の地図には、まだ分かれる前のネーデルラントがある

壁をほぼ埋める地図は、北と南に分かれる前の17州を示しています。フェルメールが暮らした17世紀には、すでに政治的な分裂を経験した土地です。画面の中では、過去のまとまりが一枚の地図として残っています。

地図は大きいのに、カーテンやシャンデリア、モデルの身体に一部を隠されています。国土を読み取る資料として掲げたというより、この部屋に過去の時間を持ち込む背景として働いています。

机の上には、彫刻とスケッチブック

モデルの前の机には、彫刻の見本、スケッチブック、布が置かれています。美術館の解説は、これらを絵画・彫刻・素描という諸芸術の結びつきを示す物として挙げています。

画家の手元だけを見ていると、この小さな静物は見落としがちです。部屋にある物もそれぞれ役を持ち、絵画とほかの芸術、そして歴史をつないでいます。

二周目は、画家がまだ描いていない部分を見る

最初はカーテン、画家、モデル、地図の順に見ます。もう一度戻ったら、画家のカンヴァスに注目してください。見えているのは、モデルの月桂冠を描き始めたあたりだけです。

私たちは完成した《絵画芸術》を見ていますが、絵の中の仕事はまだ始まったばかりです。完成作と制作途中の画面が同時にある。この時間差に気づくと、アトリエが急に生々しくなります。

作品で見る

ヨハネス・フェルメール《絵画芸術》
The Art of Painting / ヨハネス・フェルメール1666〜68年頃
カーテン、クレイオ、地図、制作途中の絵。部屋の隅々まで主題に加わっている
画像を拡大画像出典
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
Girl with a Pearl Earring / ヨハネス・フェルメール1665年頃
要素をさらに絞り込んだ作品と比べると、《絵画芸術》の室内全体の設計がよく見えてくる
この作品の解説画像を拡大画像出典
ディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス》
Las Meninas / ディエゴ・ベラスケス1656年
絵画が自分自身を主題にするときの、より劇的で複雑な方向を比較しやすい作品
この作品の解説画像を拡大画像出典

よくある質問

《絵画芸術》は、画家本人を描いた絵なのですか?
自画像だと確定しているわけではありません。所蔵館も『アトリエの画家』として説明しています。顔を見せないことで、特定の人物より画家の仕事そのものが前に出ています。
モデルは誰ですか?
歴史のムーサ、クレイオです。月桂冠、ラッパ、本がその目印で、ウィーン美術史美術館もこの解釈を採っています。
実物はどこで見られますか?
ウィーン美術史美術館の絵画館に所蔵され、現在の作品ページでは展示室XIIと案内されています。展示状況は変わることがあるため、訪問前に公式ページをご確認ください。

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