美術のことば / 空間
短縮法
こちらへ伸ばした腕は、横から見た腕より短く見えます。肘と手が重なり、手前の手だけが大きくなるからです。この見え方を平面に移す方法を短縮法と呼びます。
ひとことで言うと
短縮法の意味
短縮法は、こちらへ向いた形や奥へ引っ込む形を、実際より短く圧縮して描くことで立体感を出す方法です。
作品でつかむ
死せるキリスト
足元から身体を見る構図によって、圧縮された奥行きが強い緊張を生む
- 手前に出る部分と奥へ引く部分の長さの差を見る
- 関節が重なる位置と、手前の部分の大きさを見る
- 短縮法はドラマを強めるためにも使われる

こちらへ向く形は、紙の上では短くなる
短縮法は、手前から奥へ伸びる形を見える長さに圧縮して描く方法です。腕を横から見れば長く見えますが、指先側から見ると手、前腕、上腕が重なります。紙の上で使える長さは短くなります。
単なるデッサンの技巧ではありません。足元から身体を見上げるのか、頭上から見下ろすのか。短縮された部分を探すと、画家が観客をどこに立たせたかまで分かります。
関節の重なりと、手前の幅を見る
腕、脚、足先、横たわる胴体が見つけやすい場所です。手が肘を隠す、膝が腰に重なる、足裏が大きく見える。関節の一部が隠れるところに奥行きがあります。
長さだけを測ると、不自然に見えることがあります。そこで幅も見ます。こちらへ近い手や足は広く、奥の肩や頭は小さい。この大小が、短い形を手前へ押し出します。
《死せるキリスト》は、観客を足元へ置く
マンテーニャ《死せるキリスト》では、足、脚、胴、頭が奥へ重なります。観客は遺体の足元に近い位置へ置かれ、横たわる身体を一度に見渡すことができません。圧縮が距離の近さを作ります。
カラヴァッジョ《エマオの晩餐》では、弟子の腕と果物籠がこちらへ突き出します。籠の縁はテーブルからはみ出し、場面と観客席の境目を越えそうです。短縮法は、形の正確さと同時に、出来事へ巻き込む力を生みます。
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