美術のことば / 光と影
明暗法
イタリア語のキアロスクーロは、明るいという意味のキアロと、暗いという意味のスクーロを合わせた語です。顔の丸みを作る穏やかな明暗も、暗い部屋を斜めに切る強い光も、この方法に含まれます。
ひとことで言うと
明暗法の意味
明暗法は、明るい部分と暗い部分の差を使って形や空気をつくる方法です。立体感に加え、視線を集める場所や場面の気分まで左右します。
作品でつかむ
我が子を食らうサトゥルヌス
目、指、白い肉だけが暗部から浮かび、画面のほかの情報が消える
- 最も明るい場所と最も暗い場所を一つずつ探す
- 顔の丸みを作る明暗か、場面を切る光かを分ける
- 暗部に何が隠れ、何が残っているかを見る

キアロスクーロは、文字どおり「明るい・暗い」
明暗法は、明るさの段階を使って物の厚みや空間を表す方法です。頬の明部からあごの影までを滑らかにつなげれば、平らな画面に頭部の丸みが生まれます。
暗い背景だけで明暗法とは決まりません。明部と暗部の差が、形をどのように立ち上げ、視線をどこへ集めるかが要点です。
レオナルドは量感、カラヴァッジョは事件に使った
ナショナル・ギャラリーは、レオナルドが人物を立体的に見せるため、カラヴァッジョが劇的な効果のために明暗の対比を使ったと説明しています。同じ技法でも、働きは一つではありません。
《聖マタイの召命》では、右上から来る光が机の人物へ届きます。顔を丸く見せるだけでなく、キリストの指からマタイへ目を運び、物語の方向まで決めています。
いちばん明るい点から、影の端まで戻る
最初に最も明るい箇所を一つ決めます。次に、そこから灰色を経て黒へ移る境目を追います。段階が滑らかなら量感が強まり、明暗が急に切り替われば場面の緊張が強くなります。
ゴヤ《我が子を食らうサトゥルヌス》では、目、指、肉の白さが暗闇から飛び出します。何が描かれたかと同じくらい、暗部に何を沈めたかが恐怖を支えています。
この言葉が見える作品
用語一覧へ記事で読む
この言葉がよく出てくる記事
用語が実際の記事でどう使われているかを確かめられます。

16世紀末〜17世紀初頭 / ローマ
光は、右から左へ進みます
ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会。その礼拝堂の右壁で、キリストが暗い部屋へ入ってきます。《聖マタイの召命》は、単独で完結する絵ではありません。向かいの《聖マタイの殉教》、正面の祭壇画と同じ場所にあることを押さえてから、右から左へ進む光をたどります。
記事を読む
17世紀 / ヨーロッパ
光が差した瞬間、絵は劇場になる。バロック美術入門
暗闇へ光が差し、人物の手や皿が画面の外へせり出します。バロック美術は、出来事を遠くから眺めさせません。カラヴァッジョは強い明暗、レンブラントは動く群像、フェルメールは静かな室内を選びました。
記事を読む
18世紀後半〜19世紀前半 / スペイン
宮廷の光から「黒い絵」の暗闇へ。ゴヤ入門
ゴヤは国王一家を描く宮廷画家として成功しました。その同じ画家が、銃口を向けられた市民や、子をのみ込むサトゥルヌスも描いています。宮廷を照らす光と、戦争や老いを包む暗闇。
記事を読む