1848年、ミレーたちは「PRB」と署名した
ラファエル前派兄弟団(Pre-Raphaelite Brotherhood)は1848年、ロンドンで結成されました。中心にいたのはジョン・エヴァレット・ミレー、ウィリアム・ホルマン・ハント、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティです。
名に掲げたのは、ラファエロより前のイタリア絵画でした。V&Aの解説が示すように、19世紀の英国ではペルジーノなどの作品や複製があらためて見られていました。昔の様式を丸ごと戻すより、鮮明な色と細部を見る姿勢を足場にした運動です。
花や布を、背景で終わらせない
植物、布、金属、髪。ラファエル前派の画面では、物語の脇に置かれそうな物にも焦点が合っています。主役の顔から足元や窓辺へ目を移しても、細部の密度はほとんど変わりません。
題材は聖書、シェイクスピア、中世の物語など古いものです。それを遠い昔らしくぼかさず、当時のモデルと具体的な場所を使って描きました。古い物語と目の前の観察が、一枚の中で重なっています。
《オフィーリア》では、花と死が同じ鮮やかさで見える
ミレー《オフィーリア》では、女性の身体と同じくらい、水草や岸辺の花がはっきり見えます。ポピーは死、デイジーは無垢、パンジーはむなしい恋と結びつく花です。
『ハムレット』の筋を知らなくても、水に開いた手と上を向く顔から危うさは伝わります。物語を知ったあとで花へ戻ると、背景だった植物が場面の意味を話し始めます。
《良心の目覚め》は、室内の小物が話を進める
ハント《良心の目覚め》では、女性が男性の膝から立ち上がろうとしています。鏡には明るい庭が映り、床では猫が鳥を捕らえ、手袋が落ちています。
題名だけでは、女性に何が起きたかまでは分かりません。顔、開いた手、鏡の庭、猫の順に見ると、室内の小物が女性の気持ちを補います。
絵画から工芸へは、人のつながりを追う
ラファエル前派とアーツ・アンド・クラフツは同じ運動ではありません。ロセッティやフォード・マドックス・ブラウンは、ウィリアム・モリスの仕事に関わりました。絵画の人物像や中世への関心が、ステンドグラスや室内装飾へ移っていきます。
作品を見るときも、運動名だけを覚えるより移り方を追います。《オフィーリア》の植物、ロセッティの人物、モリスの壁紙。何が別の素材へ残ったのかを比べる方が、つながりが見えます。
作品で見る
よくある質問
- ラファエル前派はラファエロを否定したのですか?
- ラファエロ個人を否定したというより、彼以後に制度化した画一的な様式への反発でした。初期ルネサンスの観察性と誠実さを再評価した運動と考えると理解しやすいです。
- 文学を知らないと楽しめませんか?
- 知っていると深まりますが、必須ではありません。光、視線、植物や小道具の配置を見るだけでも、物語の緊張は感じ取れます。
- 最初の2作品を選ぶなら?
- ミレー《オフィーリア》とハント《良心の目覚め》を並べると、自然観察と象徴表現の両輪が見やすくなります。





