新しい鉄道橋を、機関車がこちらへ渡る

正式な題名は《雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道》。蒸気機関車が、テムズ川に架かるメイデンヘッド鉄道橋を渡り、画面の奥からこちらへ迫っています。

橋はイザムバード・キングダム・ブルネルの設計で1838年に完成し、翌年から使われました。機関車の後ろに続くのは屋根のない貨車です。当時は、最も安い運賃の乗客がそこへ乗ることもありました。

輪郭を雨へ溶かし、前進だけを残す

ターナーは茶、黄、青、白の絵具を重ね、機関車の輪郭を雨と光の中へ溶かしました。悪天候の向こうから高速の物体が現れるなら、細部まで止まって見えない方が自然です。

ただし、白いもやをすべて蒸気と考える必要はありません。ナショナル・ギャラリーの解説では、煙突から出る蒸気は小さな三つの噴出として確認できます。雨、光、蒸気は画面の中で混じり合っています。

橋の斜線が、奥と手前を往復させる

鉄道橋は水平に置かれず、右手前から中央奥へ急角度で縮みます。視線は橋の線をたどって地平線へ進み、今度は機関車とともに手前へ押し戻されます。

実際より急な短縮に加え、複線の線路も一本の細い線のように見えます。まず橋を奥へたどり、黒い機関車から手前へ戻る。この一往復だけで、列車が近づく向きを確かめられます。

野うさぎ、舟、農作業が別の速さを置く

野うさぎは、右側の線路上、機関車より手前の中ほどに薄く描かれました。絵具が透明になった現在はほぼ見えませんが、1859年の版画には姿が残っています。

左の川には小舟、右端には馬に鋤を引かせる人もいます。小舟、農作業、野うさぎ、列車。それぞれの速さを比べると、黒い機関車だけが突然こちらへ飛び出して見えます。

鉄道への期待と不安を、雨の中へ置く

この絵を近代化への警告と決める根拠はありません。ターナーは鉄道や蒸気船を何度も描き、ナショナル・ギャラリーも、列車と橋を描く価値のある現代の主題として見ていたと説明しています。

同時に、列車は勝利の記念碑のように硬く描かれてもいません。雨の中で形を失いながら進む。その曖昧さを残したところに、この絵のおもしろさがあります。

作品で見る

J.M.W.ターナー《雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道》
Rain, Steam, and Speed - The Great Western Railway / J.M.W.ターナー1844年
列車の輪郭をにじませながら、それでも前進する感覚だけは強く残すターナーの代表作
画像を拡大画像出典
J.M.W.ターナー《戦艦テメレール号》
The Fighting Temeraire / J.M.W.ターナー1839年
こちらでは帆船と蒸気船の対比がはっきり見える。並べると、《雨、蒸気、速度》でターナーがどこまで形を溶かしたかがわかる
この作品の解説画像を拡大画像出典
歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
Sudden Shower over Shin-Ohashi Bridge and Atake / 歌川広重1857年
広重が雨を線で刻むのに対して、ターナーは雨と蒸気をにじませる。天候で動きをつくる別のやり方が見えてくる
この作品の解説画像を拡大画像出典

よくある質問

《雨、蒸気、速度》は何を描いた絵ですか?
雨の中、グレート・ウェスタン鉄道の蒸気機関車が、テムズ川に架かるメイデンヘッド鉄道橋を渡って迫る場面です。
《雨、蒸気、速度》はなぜぼやけているのですか?
機関車を精密に説明するより、雨、蒸気、光、速度が混ざって見える体験を描くためです。橋の遠近法も視線を動かし、速度を感じさせます。
《雨、蒸気、速度》の野うさぎはどこにいますか?
右側の線路上、機関車より手前の中ほどです。薄い絵具が透明化したため現在はほとんど見えませんが、1859年の版画では姿を確認できます。
《雨、蒸気、速度》は近代化を礼賛した絵ですか?
単純な礼賛でも拒絶でもありません。ターナーは鉄道を描く価値のある現代的主題として扱いながら、雨に溶ける不安定さや自然との速度差も描きました。
《雨、蒸気、速度》はどこにありますか?
ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵しています。1844年制作の油彩・キャンバス作品です。
最初はどこから見ると追いやすいですか?
列車だけを追わず、橋の線をたどってから煙と雨へ目を広げると、画面全体の速度を追いやすくなります。

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工場、鉄道、改造された都市、郊外、行楽地へ拡大
新しい主題
労働者、群衆、余暇、速度、煙、人工照明

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